簡単な説明

1こ前の続き.統計学とかの一般的な本を読めばわかる話だし,沢山ネット上には落ちてる.が、書きたいから書く。

「スラム街出身の黒人による犯罪率が高い」というのを例にして書かれていたが,もっと極端に「足がでかいやつは頭が良い」という傾向が見られたとしよう.これらは同じ構造を持つ.つまり,ある特定の傾向を持つ人の性質についての主張だからだ(私は文脈から上記文章を「スラム街出身の黒人には犯罪をする傾向がある」という命題として捕らえた).
これは,○×小学校の生徒を対象にはかられた物で「頭の良さ」の指標としては学力テストの成績を用いた.これで,有意差が見られたから「足がでかいやつは頭が良い」というのは統計的事実だ.
OK.じゃあ今度の学力検査には靴のサイズの項目をとろう.


というのは,おかしく感じられるかもしれない.「足がでかいから頭が良い」というのは直感に反するだろう.
では,「足のでかさと頭の良さは無関連だ」という信念とあるいは「統計」から傾向を見つけ出す「科学的」な思考の、どちらの価値観を優先させるかという、非常に重要な問題提起を生むことになる。だろうか?


まあ,うじゃうじゃ言ったがここで問題だったのは,調査と実験がごっちゃになっていることだ.
これを調査とすると,
研究者が「頭の良さと関連する項目は何かな?」ということが知りたくて,関連しそうな項目を片っ端から調べて,知りたい項目(頭の良さ)とそれらの項目の関係性(相関)を分析するということになる.結果として「足のでかさと頭の良さはなんか関係ありそうよ」というのがでてくる。
これが実験となると
研究者は「足がでかくなるほど頭はよくなる」という仮説を持っていて、本当かよというのを調べるということになる。つまり、2つの項目の間に因果関係があるかを調べるのだ。結果として「足がでかいから頭がよい」というのがでてくる。


だから、信念と科学的な思考の価値比較をする前にすることがある。そう、実験だ。
で、実験するときに非常に重要なことがある。先ほどの「足のでかさと頭のよさ」実験はここで大きなミスをしていた。何かと言うと、「頭の良さ」には調べたい「足のでかさ」以外にもいろいろと影響するものがあるということを忘れているのだ。例えば、年齢というのは「頭の良さ」に非常に影響すると考えられる。また、「足のでかさ」にも年齢は非常に影響すると考えられる。年齢がごちゃ混ぜの実験参加者を使えば、この「年齢」という調べる対象にない項目がビビッドに影響してしまうのではないか。本当は「年齢が上がるほど頭はよくなる」という結果だったのかもしれない。そこで、同学年同士で比較するなどのこの年齢と言う項目を消すという必要がある。実験と言うのは、このように対象にない項目の影響をできる限り消して、対象となる項目だけの影響を抽出することが重要だ。そのために,被験者の無作為抽出だの刺激のカウンターバランスだのいろいろな手法がある.


つまり、それが十分でない実験や調査では「頭のよい」原因として「足のでかさ」というのは「科学的」にいえないのだ。もちろん、これは「スラム街出身の黒人による犯罪率が高い」にも同じことが言える。「スラム街出身の黒人」であるから犯罪傾向があるかを厳密に検証した実験データがあるのならば見くれ.話はそれからだ.


この人が邪悪なのは、「スラム街出身の黒人による犯罪率が高い」だとか「DQNの子はDQN」みたいな信念(個人内で真であると思っている事実)や知識(一般化できる信念)が持つ影響力を使ったところだ(と私は思っている)。
ステレオタイプと言うのは、外集団に対してその成員がもつ性質を過大評価することだ。「黒人は犯罪者だ」という知識はステレオタイプのひとつだ。ニュートンのりんごと違って人はその知識を内在化させることがある。「お前は犯罪者だ、黒人だから」と他者から見られることや扱われることで、その人が自分を犯罪者になると思わせ、犯罪者にする可能性を考えれば、人はそういう統計的事実や世間知からは逃れらんないんだろうね(他にも冤罪なんかを考えればどんどん増加することは考えられる)。
極端な例を使ったのでもうひとつ、女性は女性であることを意識させる(ステレオタイプを活性化させる)と数学のテスト成績が下がるという話はあった。これも、ステレオタイプの内在化ってはなしだな。
つまり、私はこういう人が、女性の数学テスト成績を下げる元凶だと思っているという話。