カズオ イシグロ「わたしを離さないで 」

カズオ イシグロの「わたしを離さないで 」を読了。
長編小説。


カズオイシグロの本は以前、日の名残り (ハヤカワepi文庫)を読んでいて今回で2冊目。
日の名残り」はイギリスの老執事のお話で、今回は31歳の女性であるから違うのだけれど、似た感じだった。
どんな感じかというと、読者が(肝心なことは)何も知らされずにおしゃべりに散々付き合わされて、いろいろな時代や場所に引きづり回されたあげく、最後に「作者が連れてきたかった場所」にたどり着くところが似ている(だから、こういう作品はミステリー並みにネタばれは良くないと思う)。だから、「日の名残り」が好きだった人はそのつもりで読むといいと思う。


31歳のキャシーは「介護人」でもう少しでその仕事を辞める。彼女の一人称による回想が続く。
彼女が過ごした全寮制施設「ヘールシャム」のこと。ここは特別で子供たちは外界から隔離されて「保護官」の教育のもとで過ごす。
彼女は特別な教育環境で大きくなり、自分を知っていく。


この作品の設定はSFマンガでみた(SFはよく読んでいないので他にもあるかもしれない。よくある設定なのじゃないかと思う)。でも、それよりもこの作品の設定のほうが自然だと思った。私にはこの作品の世界は、もし私達が最初の一歩さえ進められれば十分可能じゃないかと思うし、キャシーも有りうると思った。自然だと起こりうると思って、だからおぞましかった。

わたしを離さないで

わたしを離さないで