創作「水からの伝言」の恐怖1

水からの伝言」が又、一部で流行っているようです。本当に酷い話です。私はこの話が嫌いです。


どうか、「水からの伝言」の話は止めてください。もう、こんな話は広めないでください!


分かっています。こんな過疎ブログで訴えたところで、何の効果も無いでしょう。でも本当に嫌なんです。
ただ訴えるだけでは伝わらないでしょうから、私が何故こんなにも「水からの伝言」を忌み嫌っているのか、その原因となった出来事をご説明します。



始めはいつだったのでしょう。正確な日時は分かりませんが、遅くとも昨年の夏にはもう始まっていました。私が気付いたあの日、ニュースで甲子園の話題をやっていたのを覚えていますから。
しかし私はあんなにショックだったのに…本当にどうでもよいことばかり覚えているものです。


あの日、気付いたのは朝の4時くらいだったと思います。何かの拍子に夢から覚めたのです。それはあまりに自然で、最初は起きたことにも気付かないほどでした。隣りのベッドでは夫がまだ寝ている様で、私はなんとなく寝た姿勢のまま、ぼーっと朝食の支度に思い巡らせていました。夫を起こしてはいけないと思っていたのでしょう
すると夫が起き上がり、私のベッドの横に立ちました。
(もう、そんな時間?でも、目覚し時計はまだなっていないし、イヤだ故障かしら)
とにかく起きて、朝食の用意を、と思い起き上がろうとしたら
突然
「バカヤロウバカヤロウバカヤロウ…」
と、夫が寝ている私に向かってぶつぶつ呟くのです。
最初は、私に聞かせようとしているのだと思い、早く起きて謝ろうとしました。しかし、すぐにそれは独り言、少なくとも私に伝えるための言葉では無い事に気付きました。何故なら、夫は地声が大きい人なのに、今の声はとても小さいのです。そして私が起きようと身動きすると止めてベッドに帰ってしまったのです。まるで私に独り言を知られたく無いかのようではありませんか。
夫はどういうつもりであんな奇行をしたのでしょうか。思い巡らせているとそのままウトウトしてしまったらしく、目覚し時計に起こされました。起きた瞬間あれは夢だったのかとも思いました。夫は昨日までの夫と同じです。全部夢そう思い込もうとしました。しかし、違います。あんなにはっきりした夢なんてありえません。
二度寝のせいか、半分夢の中にいる様な感じのまま朝の支度をし夫を送り出しました。


あの原因が分かったのは、洗濯をしていた時でした。
そうです。
水からの伝言」です。
私達には子どもがなく、ずっとその存在を知らなかったのですが、そういう話があるそうで、今の子ども達は学校で教わるのだそうです。この話はちょうど前日夫から聞きました。
「全くこんなバカな話が流行ってるなんて酷い話だ」
夫はそう言っていました。
「あら、でも夢のあるお話じゃない。本当だったら素敵だわ」
夫は大きくため息をつき、如何に間違っているかを説明してくれました。私は難しいお話はよく分からなかったのですが、夫が言っているのだから間違っているのだろうと思いました。
でも、それが間違いだったのです。


夫は恐ろしいことにこれを使って私を殺そうとしているのです。
水からの伝言」というのは、「ありがとう」などの綺麗な言葉を水にかける(書いて貼ったり言ってあげる)と水の結晶が綺麗になるという話です。「バカヤロウ」などの汚い言葉にすると水の結晶は汚い形になります。私達の身体の多くは水ですから、汚い言葉をかけられると体内の水が汚くなって、病気になるんだそうです。
夫はきっと私に汚い言葉をかけることで私の体内の水を汚くさせようとしているにちがいありません。難しいことは分かりませんが、汚れた水になってしまったら人は生きていけないと思います。
夫はとても頭の良い人です。私を殺したいと思っても失敗するような方法はとらないでしょう。これならばれない(私に聞かせる必要すらありません。私の体内の水に聞かせられればよいのですから)方法ですし、警察に捕まらない方法です。夫によるとこれはお呪いのようなもので擬似科学なんだそうです。法律に明るくありませんが、呪い殺すことは合法的なんだということを子どもの頃漫画で読みました。
ならば、これによって私が死んでも、夫を罪に問えません。
それに、突然「水からの伝言」なんて話をしたのもおかしいです。自分に疚しい事があるから、私が正しい知識を得る前にあえて偏った情報を与えて、気付きを遅らせようとしたのでしょう。でも、これについては、夫は間違えました。
もはや私は夫の企みに気付いてしまいました。私を殺す理由は何でしょうか?不倫でもしているのかもしれません。そういえば最近急に優しくなったりしてどうも様子が変なことが多くなりました。どうせ相手の女に唆されたのでしょう。
でも大丈夫です。
私は気付きました。私は死にたくありませんし、私にはこの幸せな家庭を守る義務があります。




ぐだぐだ長くなってしまいました。「水からの伝言」の危険性について分かっていただけたら幸いです。
結果を先に書いてしまえば、私は勝利しました。その方法はまた次の機会にお伝えします。