海堂尊「チーム・バチスタの栄光」

海堂尊の「チーム・バチスタの栄光」を読了.
今度映画にもなる小説で,第4回「このミステリーはすごい!」大賞の受賞作.
受賞当時,現役のお医者さんが書いたミステリで有名になったこと,それと審査員の人がべた褒めだったのを覚えている.
それで,「現役××による告発.現代○○の問題点に光を当てた」系の湿っぽい感じの話かなと思って敬遠していた.

で,たまたま読んでみたら,ぜんぜん違っていて,すごく面白いエンターテインメントだった.
話はすべて院内で起こる.不定愁訴外来責任者・田口という万年講師が,超エリート手術チームに起こる手術ミスの謎を解くという役目を押し付けられる.
前半は,田口がチームメンバーにインタビューを行う形.後半は田口がいる中さらに術中死が起こり,助っ人として厚生労働省の役人白鳥が推理を展開していく.
術中死はなぜ起こるのか?単なる手術ミスなのか,それとも何らかの意図があるのか?


リアリティについては良く分からない.専門的知識が無いから.でも,適度に「象牙の塔」な感じがリアルに感じた.ただ,実際にこの作品の面白さは専門的知識とか,問題提起とか,トリックとかが良いからじゃないなと思った.何かがすごく突出して面白いわけではない.総合得点が高いのだ.バランスが良いというか.要所要所は押さえているもののどれかに深く踏み込んでいない.何かに深く踏み込めば色々考えたり,衝撃を受けたりして大変だ.それが楽しいときにはそういう本もいいが,疲れ果てただただ楽しませてほしいときもある.そういうときにこの本はすべてが適度で安心して彼の世界で楽しめる.


この作品の続きは出ているが,まだ読んでいない.1冊しか読んでいないから根拠は薄いが,私は今後彼の作品は大丈夫だと思っている.だから,私は自分が疲れ果てて面白い本を読みたいと思ったときにはこの作者の本を読むと思う.この作品で彼には一定の質の面白い作品を読ませてくれる人だという安心感があるからだ.

チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの栄光